人の心を打つのは、気取ったデザインだけじゃない!世の中の「なぜこうなった?」なデザインを勝手に表彰します。

 


 

 

今回の認定員:

先輩アートディレクターS後輩アートディレクターM

 

 


 

1)「子供の絵」って似てる?

 

後輩あれ? それ何の絵ですか?

 

先輩:あ、これね! 子供の頃に壁に女の子の絵を落書きしてたんだよ〜。祖父が消さずに残してくれてたみたいで、懐かしくて思わず写真撮っちゃった!

 

  

後輩:へー、なかなかよく描けてるじゃないですか。

 

先輩:あ、ありがとう……?

 

後輩:この絵って、Sさんが小学生くらいの時のものですか?

 

先輩:たぶんそのくらいかな? 髪の毛の描き方とかに少女漫画とかの知識が多少入ってそうだし………なんか子供の描く絵ってみんな似てない?

 

後輩:いや、突然!そして言い切るにはざっくりしすぎでしょ!

 

先輩:え〜。そりゃもちろん個性はあると思うけど「子供の絵といえばこれ!!」みたいな共通点がある気がするんだよね〜。

 

後輩:ふむふむ……というわけで、第2回目は私たちで「子供の絵」をテーマに語っていきましょうか!

 

先輩:あっこれ雑談じゃなかったんだ!?

 

 

 

2)図形と状況表現

 

後輩:まあ、でも確かに「子供の絵」って見ただけですぐにわかりますよね。大人が真似して描いてもなかなかこうはならないというか……。

 

先輩:ちなみにMちゃんはどんな絵描いてた?

 

後輩:えっと、、こんなのとか。

 

 

後輩:あと動物もよく描いてましたね。

 

 

先輩:かわいい!! 子供の絵じゃん!!!!!!!

 

後輩:まあ、子供の頃の絵ですから……。

 

先輩:そういえば何かで見たんだけど、2〜4歳くらいの子は『頭足人(とうそくじん)』っていう、人間の頭から手足が生えたような絵を描くらしいんだよね。

 

後輩:へえ〜…… 言われてみれば、幼いとほとんど顔だけみたいな絵を描いてる子は見かけますね。『人間=顔が本体』ってイメージで描いてるってことなのかな。

 

先輩:さっき見せてもらった絵は人物に体をしっかり描いてたし、一般的に言うと5〜6歳くらい?

 

後輩:あ、そのくらいだと思います!

 

先輩:Mちゃんが見せてくれた絵みたいに、モチーフを平面的に組み合わせて風景を作っている絵はまさに「子供の絵」ってイメージするものだなあ〜。

  

後輩:花と人と太陽は子供の絵のマストアイテムみたいなところありますね……。

 

先輩:他にも状況を描く図形がだんだんと入ってきて、状況表現ができてくる年頃ってことかな?

  

後輩:認識はしていて、でも決して目で見たものを描いている訳じゃない感じがしますね。 写実的に描いた訳じゃないくて、記憶にある印象的なパーツを組み合わせているような……?

 

先輩:ところで、さっきの絵を見てたらなんとなくエジプト絵画を思い出したよ。

 

古代エジプトのフレスコ matrioshka / Shutterstock.com

後輩:地面があって人がいて、状況があって……確かに似ている気がします!

 

先輩:あと、エジプト絵画には偉い人は大きく描く、みたいな決まったルールがあるよね。それってルールではあるけど、根底を探るとある意味【イメージを描いてる】ってことかなあ……と思って。

  

後輩:ある種、目に見えたものを写実的に描いたわけでなくしっかりとデフォルメされた表現ってことですね!

 

先輩:そうそう、それが言いたかった!

  

後輩:つまり、子供の絵は突き詰めると……

 

先輩:エジプト絵画となる……

  

先輩後輩:神々しい〜〜〜!

 

  

  

3)子供の絵=洗練された表現?

 

先輩:子供ってあまり複雑な知識がない分、目に入った情報を素直にシンプルに捉えるのがうまいのかもな〜なんて思っちゃった。

 

後輩:「描かれているもののわかりやすさ」っていう意味でいうと、公共のサインデザインなんかと通ずるものがありますね。

 

Public toilet Photo : Zapylaiev Kostiantyn / Shutterstock.com

先輩:逆にそういった「きちんと記号化された、わかりやすいもの」から学んでるとも言えるのかも。

 

後輩:そうか……人物や花や太陽の描き方とか、誰に教わったでもなくみんなどことなく似ているのは、絵本やテレビからこういったサインデザインも含め、世の中にあるいろんなものを見て覚えているのかもしれませんね。

 

先輩:自分もどこで教わったでもなく女の子は三角形に体を描いてたし、太陽は円を描いて周りに線を引いてたよ……不思議だな〜。

 

後輩:世の中の共通認識を感じ取って、無意識に自分も描いているのかもしれませんね!

 

先輩:そうだね!

 

後輩:そういえば子供の時って、新しく覚えた形とかって積極的に真似して描いてた気がします。私は動物が好きだったので、動物を描くことが多かったかなあ。

 

先輩:私はアニメが大好きだったから、ア○パンマンを見ながら無限に描いていた気がするよ……。

 

後輩:そういえばポケ○ンが流行った時、みんな同じ目の描き方になってたりしませんでした?

 

先輩:うわ!そうだったかも!

 

後輩:その時に目に映ったもの、流行りのアニメ、自分の好きなものなんかを真似して、要素を抽出して、各個人の中である程度ルール化されて積み上がったものが「子供の絵」とも言えるかもしれませんね〜。

 

先輩:共通で見ていたものからだんだんと目にするものも変わって、絵にも個性が付与されて行ったりしてね。そうしてみんな大人になっていくんだなあ……。しみじみ。

 

後輩:つねに何か吸収して自分の表現に落とし込んでいってますよね!

 

先輩:自分たちもその気持ちを忘れないように、常に新鮮な目で世の中を見ていきたいね!バブバブ!

 

後輩:急に赤ちゃんになるのやめてください。

 

先輩:はい……。

 

後輩:でも、そうですね。目に映ったものを素直に受け入れて表現していくのは子供の特権であり見習うべき点ですよね。

  

先輩:今回はちょっと分解して考えてみたけど、子供の絵が魅力的に感じるのって、想像力をめいいっぱい画用紙にぶつけてる力強さみたいなものもとっても大きいよね。

 

後輩:うまく言葉で言い表せない「良い」が詰まってますよね。

 

先輩:とにかく「描くぞ!」っていうパワーがあって、上手下手関係なく筆を動かしてて…… もはやアーティストでは!?大先生なのでは!?!?

 

後輩:では、今回の〈子供の絵〉に関して、ずばり、隠れグッドデザイン賞は!?

 

先輩:認定!!!

 

後輩:わーーーー(パチパチパチパチパチパチ)

 

先輩:むしろ巨匠に対して「隠れ」なんて烏滸がましかったかもしれません……!

 

後輩:というわけで今回も「隠れグッドデザイン賞」として勝手に認定させていただきましたが、
今後も「え?これが???」という秘宝をENJIN TOKYO JOURNALでは探し歩いてゆきたいと思います。

 

せーの、

 

先輩後輩:次回もお楽しみに!