アートディレクターとして活躍する中野慶人さん。彼が選んだ、仕事への向き合い方が垣間見える一冊とは。 (取材:文=和田瑞季)
-この本を選んだ理由は?
読書はあんまりしてきた方じゃないんですけど、その中でもこの本がいちばん想像を楽しめるという意味で、とても味わい深く感じている一冊だったので選びました。あとは、著者の星野さんの人生観や死生観を感じられる部分ですね。自分が年を重ねることで変わる見方もあったりと、今後も長く付き合っていけそうな本だと思っています。
-この本の好きなところは?
情景が想像できるところがおもしろいです。アラスカの大自然の厳しさとか、季節が変わっていくときの風のかんじとか。普段アートディレクターとしてビジュアルからあれこれ想起することが多いからこそ、目に見えない、行ったことのない場所の景色を文章から想像するという感覚がとても楽しいんですよね。あとは星野さんの語り口調。淡々としていて、誇張も演出もなく感じたままを誠実に書いているようなんですけど、それがむしろ臨場感のある読み応えになっていて好きです。
-この本があなたの仕事や人生観に与えた影響は?
ぼくは性格的に生き急ぎがちというか、何かしていないと焦りや不安にかられてしまうところがあるんです。でもこの本の中に『東京であわただしく働いている時、その同じ瞬間、もしかするとアラスカの海でクジラが飛び上がっているかもしれない』という言葉があって、確実に地球のどこかではゆったりとした時間が流れているんだなあと思えるようになりました。いい意味で立ち止まれる。焦りすぎてしまう心をゆったり落ち着かせることができるようになりました。
-あなたにとってこの一冊は?
体も心もほぐしてくれる一冊。